山形エクセレントデザインセレクション2000
審査委員講評

工業デザイナー
GKデザイングループ代表
審査委員長
 榮久庵 憲司


 私が、コンペを審査する上で一番嬉しく思うことは、コンペで一等が優れているということである。コンペというものの大きな目標は、優れたものを先駆けとしながら時代を引っ張っていくということにあるだけに、大賞がそれに値するということが重要であると思っている。そのような意味において、製品部門において、時代の流れの先を行くようなものが大賞を受賞したということは、素晴らしいことであり、エコロジカルで、地域性も高く、かつ都市性、時代感覚というものにも適応し、また、人々のつながりによく配慮された等、それら各要因を総合的に高い質でまとめた大賞製品は、賞賛に値する。

 テーマ部門のユニバーサルデザインでは、大賞である「片手で使える急須」が、非常に伝統的な急須というものに焦点を合わせながら、ユニバーサルのデザインの効能を発揮させた着眼点について日常性が感じられ、評価に値した。造形的にも美しく、何より目的が明確であり、使用法が端的に表現されているということは、この分野としては重要なことである。

 テーマ部門の県産品パッケージについては、大賞が背中にかけるワインチューブであり、日本にとって歴史の浅いワインが、日本人の手によって独特の扱われ方をされ始めたことは、大変に結構なことだと思う。また、背中に背負うスタイルは、いかにも風土色を感じさせ、しかも、パッケージとして必要であるエコロジカルな配慮の処理がされていることは良い。特筆すべきは、人を楽しませる形をしていると同時に、土産物・贈答というメッセージが十分パッケージデザインの中に含み込まれている点であり、楽しみな作品であると同時に、今後、山形のパッケージの可能性が感じられた。

 製品部門については、応募点数が53点と若干少ない感はあるが、今後の製品は、国内市場だけでなく世界を目標とすべきであり、その観点から製品を見ると、今回受賞された製品は十分その素質があると思われたことは収穫である。

 一方、ユニバーサルデザインに関しては、未だしの感があり、これからという印象を強く受けた。しかし、足下に市場があるので、じっくりと時間をかけ、可能なら資金・研究資金等行政の協力や産学共同等の支援を受け、ユニバーサルデザインを考える調査の研鑽を行うことも必要であり、この分野は、まさに、行政・大学・産業との一体化が図られる世界になり得ると思う。

 最後に、今回印象に残った作品としては、鋳物の作品がある。鋳物というものは未来があるし、あの厚みと重さは、文化の落ち着きと深さを出すものである。今回も大賞をとらんばかりの位 置にあり、今後も引き続き新たな取組を行って欲しい。同時に、これこそ日本人の落ち着きを取り戻すために大変必要な世界だと、私は感じている。